檪野寺・木造十一面観音坐像

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 檪野寺の本尊である。大悲閣(収蔵庫)内に奉安され、秘仏としてかつては三十三年目の開扉以外は容易に拝観することができなかったが、現在は十一月三日(文化の日)に特別開扉されている。
 寺伝によると、桓武天皇の御代の延暦十一年に伝教大師(最澄)が、比叡山根本中堂建立の用材調達のため杣谷巡錫の際、霊夢を感じて、檪の生木に一刀三礼のもと立木のまま彫刻され、この地に安置されたといわれている。
 像は一木造りで左手に華瓶、右手は膝の上にあげ念珠をもち、頭上には十一面化仏を頂いて吉祥座を組んでおられる。目鼻立ちは大ぶりで、はっきり刻み、体躯は肩幅が広く体の厚みを十分にとり四肢は太目に作り衣のひだ等も規則的に整理され、彫りも鋭い稜線を残しており、丈六像にふさわしいどっしりと落ついた姿に象形していることなどから考え、平安(八世紀)初期の制作と思われる。