檪野寺・木造聖観音立像
170.3cm

 桧の一木彫の木造は両腕のほとんどを含めて彫出し、内刳りを全く施さない明快な構造で、頭上に髻を結い、その前に宝冠を大きく表す天冠台を彫り出し、いわゆる密教系の宝冠を付ける本格的な十世紀の一木彫像である。地髪はまばら彫り耳朶は環状にしない厚みのある形である。右手を垂下し左手はひじを曲げて蓮華の茎を持ち、腰を少しひねって左足に重心を置き、右ひざをゆるめて立つゆったりとした姿である。面長の顔に切れ長の目を刻み、目じりがつりあがっているところから、観音像としては珍しく厳しい表情である。等身大のすらりとした表情で、ややほっそり身の感じであるが、つりあいのよい像である。衣文の虞理も条帛の端や裳の合わせ目などに工夫をこらし、下半身をにぎやかに表している。仏身の刀法もまた精鋭で、弘仁末期の手法著しく迫力があり、この様な特徴と一木彫の古式の構造から平安初期の彫像とみられる。